院長ブログ

歯周病のお話2 ~歯周病にもステージがある?~

それでは前回の内容を踏まえて、今回は歯周病とはどんな病気なのか、その全体像を一緒に見て行きしょう。

 

<歯周病 とは>

「歯周病」を一言で説明すると、「歯の周りの骨が溶ける病気」です。

前回もお話しましたが、歯周組織は歯の周りを囲む歯肉、歯槽骨、歯根膜、セメント質の4つから構成されています。

これら4つの歯周組織いずれか1つにでも異常(=炎症)が起きていれば歯周病である、ということができます。
では、図で確認してみましょう。

図1

 

 

図1からも分かるように、健康な歯周組織では歯肉、歯根膜、セメント質、歯槽骨がキレイに並んでいるのに対して、歯周病にかかるとそれぞれの組織に炎症が起き、歯肉は赤く腫れ、セメント質は汚染され、歯根膜や歯槽骨は破壊され、喪失してしまいます。

このような歯周組織の炎症による変化が生じた結果、歯周ポケットと呼ばれる病的な溝が歯と歯茎の間にできてしまうのです。この歯周ポケット、基本的に深ければ深いほど重度な歯周病であり、歯周組織の状態が悪いと言えます。ご自身の歯周病の重症度を客観的に評価する大事な指標ともなりますので覚えておいて下さい。

 

<歯周病の大きな分かれ道>

歯科学的に歯周病を大きく分けると、歯肉炎と慢性歯周炎とに分類できます。4つの歯周組織の中で歯肉のみに炎症がある状態を歯肉炎と呼び、それ以外の3つにまで炎症が及ぶと慢性歯周炎と呼ばれるのです。

ところで、なぜ歯肉の炎症だけが特別扱いなのかご存じですか?

歯肉炎の状態で治療をすれば完全に健康な状態にまで回復させることができますが、組織再生能力が非常に乏しい他の3つの歯周組織にまで炎症が及べば治療を施しても、基本的に歯周病にかかる以前の完全に健康な状態へは戻れません。

これが歯肉炎が特別扱いされる理由なのです。

このように歯周病と一概に言っても、まだ歯肉炎の状態の方もたくさんおられ、その早い段階で発見、治療されるかどうかが、お口の健康にとって大きな分かれ道となるのです。

 

<進化する歯周病>

20代で7割、30代で8割の人が患っていると言われる歯周病。生活習慣病とも言われ、ゆっくり進行するため、痛みなどの自覚症状もほとんどありません。初期の歯肉炎の状態で発見できれば良いのですが、残念ながら発見されずに他の3つの歯周組織にまで炎症が及んでしまうと、冒頭にも書かせていただいた様に歯の周りの骨が溶け始めます。

そして更に放っておくと、どんどん骨が溶かされ、最終的には歯が抜けてしまいます。

では具体的にどのような段階を得て骨が溶かされていくのか図で確認して見ましょう。

 

図2

歯周病といっても様々な状態があり、いきなり歯が抜けるわけではありません。図2より健康な状態から、歯肉炎→軽度歯周炎→中等度歯周炎→重度歯周炎と段階的に進むことがわかると思います。歯肉炎の状態では歯肉のみに炎症があり、他の3つには炎症がありません。つまり骨がまだ溶かされていないのです。

しかしそれ以上、少しでも歯周病が進行すると、それに伴って歯周ポケットは深くなり、歯周組織の破壊も進んでいきます。つまり骨が溶けはじめるのです。そしてついには歯の周りを支える歯根膜や歯槽骨などが溶けて無くなり、歯が抜けてしまいます。

では、実際のお口の中の状態はどうなっているか、写真で確認してみましょう。

写真1

歯肉炎

写真2

中等度歯周炎

写真3

重度の歯周炎

写真でも進行していく様子がはっきりとわかりますね。写真1の歯肉炎の状態では歯の周りの歯茎(=歯を囲んでいる歯茎のフチの部分)だけが炎症起こしているのに対して、写真2では歯周病が進み、歯茎の炎症のみならず骨まで溶かされた様子が伺えます。その結果、歯茎が痩せ、歯が少し長くなってきているのがお分かり頂けるかと思います。

そして、写真3では更に歯周病が重症化し、明らかな歯茎の腫れや出血に、歯が抜けそうなほどにまで骨の吸収が進んでしまった状態です。

 

<あなたは歯周病?>

慢性的にゆっくり進行することで痛みなどの自覚症状が非常に少ない歯周病ですが、ご自身でも注意深くお口の状態を観察すれば必ず歯周病のサインが見つかります。

早速、歯周病のサインセルフチェックをしてみましょう。

①歯茎がムズムズする感じがある?

②歯茎から血が出ることがある?

③唾がネバネバして気持ち悪い?

④口臭がする?

⑤最近、歯が長くなってきた感じがする?

⑥硬い物などが特に食べにくくなってきている?

 

健康な状態と歯周病になってしまった状態をご理解いただいた上で再度ご自身のお口の状態を観察してみてくださいね。