院長ブログ

brush up!

ちょうど一か月前くらいになりますが、brush up! という新しいサイトがたちあがりました。

 

ご縁があって、僕はその監修をさせていただいたのですが、テーマや内容、そしてコンセプトはもちろんのこと、それ以外の写真やウェブデザインもそうそうたるコダワリを持って作成されておりますので、是非一度ご覧いただけたらと思います。

http://brush-up.me/

 oral_billboard1

 僕ら歯科医はあたり前のように、できた虫歯を削り、悪くなり過ぎた歯抜く、そして入れ歯をつくる。

日本の保険治療の中ではこのようなありきたりの治療に歯科医も患者も疑問を持たない。しかし、このような治療を施しても、また数年の内に再度治療が必要となっているのが現実です。

 

<再治療になる訳その①・・・おろそかになっている歯周治療>

 研修医の頃の僕は歯科治療の技術を習得するためにただ単に院長に言われた治療をこなしていく日々を送っていました。できないことができるようになる、それに遣り甲斐を感じ、それだけで満足していました。あれから数年が経ちほとんどの治療が自分でできるようになると、僕の中で一つの疑問が思い浮かびました。当初から大学病院の歯周治療科に所属していた僕は、歯を支える土台の歯ぐきの治療(=歯周治療)の大切さを実感していましたが、なぜか一般の歯科クリニックではその治療がほとんどされていないのです。虫歯ができたら治療する、痛みがでたら治療する、歯がなくなったら入れ歯をつくるなど、歯科クリニックではこれらの当たり前の治療が患者さんにも浸透していて、歯周治療はクリーニング程度しか行われておりませんでした。

そこで僕は、勤務先の歯科クリニックに来られる患者様にも大学病院同様に歯周治療を試みたところ、断られてしまうことも多かったですが、それでも僕が説明することできちんと歯周治療を受けていただいた患者様もおられました。

我々歯科医の説明不足から招いてる歯科クリニックの現状を思い知らされることとなりました。

目に見える範囲だけキレイに治療しも土台の歯ぐきの治療がおろそかであると歯自体が長持ちしません。

 

<再治療になる訳その②・・・本当の原因が解決できていない?>

どのうようにしてたくさんの虫歯ができたのか?どのようにして歯周病が進行し歯がグラグラしてしまっているのか?その悪くなった本当の原因を発見し改善しないことにはまたすぐ悪くなってしまうのです。

虫歯や歯周病が進行していく原因には歯磨きや歯並び、細菌の種類や量そして生活習慣など様々でです。そして単一な原因で発症するケースは少なく、複雑にいろいろな原因が絡み合って発症してしまうのです。ですから、来院後、悪くなっている歯の治療はまず行うべきことですが、一通り問題のある歯の治療が終了すれば、そこから悪くならないため治療がスタートするのです。

 

 <再治療になる訳その③・・・歯は何のためにあるのか?>

患者様の中には、どんな状態の歯でも1本と数えて大切にされている方がいらっしゃいますが、

 歯は量よりも質です。歯は第一の消化器官とも言われ、食物をある程度の細かさまで噛み砕く必要があります。咬めない歯を無理に残して数だけ揃えていても噛み砕くことができません。

気兼ねなくしっかり食事ができるお口の環境作りが大切なのです。

当たりまえ過ぎる話かもしれませんが、そう、歯は物を噛むためにあるのですね。

もともと残せない歯を無理に残しているとまたすぐに治療を再開することに繋がります。何のために歯があるのかしっかり考えましょう。

 

歯のことや歯周病のこと、ご自身のお口の中の状態や、歯とお身体の健康との関わりことを少しでも多くの方に知ってもらえればと思い、今回監修させていただきました。 

このbrush up!の監修にすることで、いろいろと自分自身もブラッシュアップされたような気がします。

今後も引き続き、新たなトピックが出てきますのでお楽しみに!

歯と身体のつながり②

<胃腸と歯の関係>

健康な歯を保ち、よく噛んで食べる事により胃腸の消化吸収を助けることは前回で述べました。

では歯や口(=口腔)はどのように胃腸と関係しているのか?見ていきましょう!

 

そもそも、口腔と胃腸は全て消化器であり、食べ物が体内に入って出ていくまでの一連した臓器です。口腔を消化器だと認識できてない方、いませんか?

 

私たちが日頃行っている消化には大きく分けて3つのプロセスがあると言えます。

第1のプロセス=お口に入れた食物を、歯で噛み砕きながら唾液(の酵素)で消化します。

第2のプロセス=お口で消化した食物を胃液で更に細かく消化します。

第3のプロセス=小腸や大腸で「消化」以外に「吸収」も行い、身体に必要な栄養素を吸収し、その後不要物を肛門へと運び排出します。

これらからも消化の始まりである口腔でしっかり食物を噛み砕かないことには、先の胃や腸でうまく消化・吸収できないことがわかりますね。

 

また、一連の消化器官を2つに分けると、消化のみの口腔と胃、消化・吸収両方を行う小腸と大腸となります。つまり、口腔と胃は分類的にも機能的にも関わりが深いことがわかります。

東洋医学でも胃が荒れると口腔の粘膜も弱くなり、口内炎や口角炎、そして口が切れやすくなったりすると言われています。

また胃が荒れると口腔以外に肌荒れも起こり易くなります。内臓の疲れや栄養バランスの悪さによって、余分な栄養分など分解・解毒できなかった毒素が、ニキビとしてあらわれることもあるようですね。

ニキビや口内炎など、お肌やお口のトラブルが多い方は、胃がストレスを感じているのかもしれません。

 

その他に、牛やヤギなどではよく見られる「反芻咀嚼」は一度胃に送った食物を再度口腔に戻して咀嚼(噛み砕く)する消化方法で、人間では食後などに出る「ゲップ」がその名残に当たります。誰でも経験のある「ゲップ」。実は胃から消化不良のサインだったのです。

僕もよくゲップがでたりしますので、気を付けないと・・・。

せっかく、食べたものがキチンと消化・吸収されるよう「ゲップ」がでないくらいにまでしっかり噛み砕きましょう!

 

胃腸とお口の関係はなかなか深いものがありましたね。明日から早速、しっかり噛むことで胃腸にやさしい食事方法を取り入れ、身体の健康作りしてくださいね。

 7975889933_8d85c1c4ae

 次回は健康な歯で噛むことによって他に身体にどのような影響を与えるかみていきましょう。

歯と身体のつながり①

さて、今回からはお口の中だけでなく、歯と全身との関わりについてみていきましょう。

 

<身体の健康は歯の健康から・・・>

人の身体の成分はほとんどが水、タンパク質、炭水化物そして脂肪で、

それらに以外に、少量のカルシウム、リン、亜鉛、マグネシウムなどで構成されています。

つまり元をたどれば、日頃のなじみの深い飲み物や食べ物で身体が作られているのです。

 

しかし、肉や魚、野菜など全ての食べ物はそのままでは栄養として吸収する事ができず、身体にとって、異物となってしまいます。

そこで、これらの異物を無毒化し、身体の栄養源として取り込む為に、消化器官(歯、胃や腸など)が存在するのです。

歯は第一の消化器官とも言われていて、歯の健康なくしては身体の健康は語れません。

歯である程度の大きさになるまで食物をしっかり噛みくだかなければ、胃や腸での消化、吸収はできません。これらが全て正常に機能する事で健康が維持できるのです。

 

また、健康な歯は他にもたくさんの役割を果たしてくれます。

歯ざわりや歯ごたえを楽しんで味覚を豊かに保つことや、美しい顔の形や表情を作ること、

そしてはっきりとした発音でスムーズに会話を楽しむことなど様々です。

もはや生活の質を保つためにも、歯は欠かせない存在と言えます。

僕もついつい時間に追われて食事の噛む回数が減ってしまうことがありますが、やはりその後はお腹の調子や体調が優れません。きちんと消化吸収ができてないんでしょうね。そんな時、歯で噛み砕く大切さを思い出します。忙しいときこそ「しっかり噛む」ということを認識し、日々の生活に取り込みましょう。

 

次回はもう少し詳しく胃腸と歯の関わりについてお話します。

歯周病のお話3 ~歯周病の検査~その⑤

さて、今回は5つの検査の内、残りの2つです。前回までの視覚的な検査とは違い、目に見えない細菌や身体の中の反応が歯周病よってどのような状態となっているのかがわかる検査です。

「歯周細菌検査」と「血液検査」についてみていきましょう。

 

<歯周細菌検査>

この検査は歯周病の原因となる菌の種類や数を特定する場合に使用します。歯周病は細菌感染症ですが、結核などの感染症とは違い、一つの菌の感染によるものではありません。ですから、「歯周病」と一概に言ってもどのような菌が主な原因となっているケースなのか一目ではわかりません。細菌検査で原因菌をつきとめることにより、現在のステージ(軽度、中等度、重度)が一層明確となり、効率よく治療を進めることができます。

お口の中から唾液などを採取することで、簡単に行える検査です。徹底した歯周治療希望される方には必要な検査です。

僕は歯周病治療を始める前や治療途中だけでなく、定期健診時にも行うことで菌の動きが把握でき、より歯周病の維持・管理が徹底できるのでお勧めです。

IMG_0654

 

<血液検査>

細菌感染症である、歯周病の原因菌が歯茎の毛細血管から体内へ侵入すると、それを排除するために、身体の免疫反応として抗体が生産されます。したがって、この生産された抗体の量を血液検査で測定すれば、原因菌の感染度合を把握できるのです。それが「血液検査」なのです。

「歯周細菌検査」と合わせて行うことで、口腔内の歯周病菌の量、種類とその菌による全身へ及ぼす影響の関係を調べることができ、歯周治療に役たてることができるのです。

この検査も定期的におこなうことで、歯周病の管理に有効なので、治療の前後だけでなく定期健診時にも受けられることをお勧めします。

IMG_0657

 

歯周病のお話3 ~歯周病の検査~その④

引き続きまして、今回は歯周病治療を進めていく要所要所で必要となる歯周ポケット検査について説明していきます。

 

<歯周ポケット検査>

これは歯周病のステージを判別するのにもっとも重要な検査で、歯と歯茎と骨の関係や、歯茎の炎症度合を知るのに必要不可欠な検査です。

具体的にはメモリの入った器具で歯と歯茎の間の溝の深さを測り、数値で記録していきます。

歯茎の炎症が強い部位や骨が溶かされている部位では特に数値が深くなります。この深くなった溝を歯周ポケットといいます。

多少のチクチクした痛みを伴う場合がありますが、歯周治療中のみならず、歯周病治療後も定期的にこの検査を受けていただければ、何かあっても症状がひどくなる前に早めの対処が可能です。

IMG_1301

ポケットプローブという器具で検査します

 

日本歯周病学会では                   

軽度の歯周病(初期) ポケットが3mm以下    

中等度の歯周病    ポケットが4~6mm     

重度の歯周病      ポケットが7mm以上    

と定められていて、当院でも同じ判定基準にしています。

また、実際はこのような深さによる歯周病の進行度合いの判断だけではなく、測定時にどれくらいの頻度で歯茎から出血をともなっているかも同時に記録することで、出血率として歯茎の炎症の度合も測定することができます。

歯周病のお話3 ~歯周病の検査~その③

前回のレントゲン検査に引き続き、2つ目の口腔内写真検査について今回は紹介していきます。

 

<口腔内写真検査>

歯周病は歯を支える骨が溶ける病気なのですが、それにともない、歯茎の腫れや出血が見られたり、歯茎が下がってくるなどの変化も見られます。また赤くなったり、ピンクになったりと歯茎は病状により色も変化します。これらの歯茎の変化はレントゲン写真からは読み取れないので、口腔内写真による検査が有効なんです。

(治療前) 前歯の歯と歯の間の歯茎が特に腫れています

(治療前)
前歯の歯と歯の間の歯茎が特に腫れています

(治療後) 歯茎の腫れが改善し、歯茎が引き締まった状態です

(治療後)
歯茎の腫れが改善し、歯茎が引き締まった状態です

口腔内写真は治療前や治療後に撮影します。

歯周病を治療すると歯茎の炎症が改善し、引き締まります。その結果として、多くの場合、歯と歯の間の隙間が大きくなります。ただ単に歯茎が痩せたのではなく、引き締まったのだと認識できるのは口腔内写真検査だけです。

 

歯周病のお話3 ~歯周病の検査~その②

一つ目のレントゲン検査を今回は詳しく紹介していきます。歯周病以外の治療でも重要な検査となり、歯や骨の病気の診断には欠かせません。

 

<レントゲン検査>

歯周病は骨が溶けていく病気ですから、レントゲン検査なしでは診査診断はで

きません。このレントゲン検査には種類があり、①パノラマレントゲン ②デ

ンタル10枚法 ③ CT撮影 の順に詳細な骨の状態がわかります。通常は①のみ

ですが、当院では必要に応じて②や③ を追加で撮影し歯周病治療を行います。

 

①パノラマレントゲン

キタ_カオル_喜多_かおる_28122012_151623全体的な骨や歯の状態を一度に把握することができます。スクリーニング的にトラブルの原因や部位を絞り込むことができるため、初診時に撮影され、おおまかな骨の溶け具合などをチェックします。これから歯周病治療を始められる方が対象です。

②デンタル10枚法

retouch_20090520①に比べて更に詳しいに骨や歯の状態を確認するための撮影法です。歯をブロックに分け、一枚ずつ撮影するため、像の重なりが少なく、より正確な骨の溶け具合が把握できます。硬いものが噛みにくい、歯がぐらつくなど、中等度から重度のステージの方が対象です。

③CT撮影

無題骨や歯の厚みがわかりにくい①、②とは違い、立体的に骨の検査が行える撮影方法です。部分的に正確かつ細かい骨の溶け具合まで確認する事ができます。再生療法などの歯周外科処置やインプラント治療を受けられる患者様、そして①、②のレントゲン撮影で、原因が特定できない場合などに有効です。

歯周病のお話3 ~歯周病の検査~その①

前回までに、健康な歯や歯茎ぐきの状態、そして歯周病の進行していく様子に

ついいて「歯周病のお話その1」「歯周病のお話その2」の中でお話してきまし

た。ですが、実際にご自身のお口の中が今、軽度、中等度、重度のどのステー

ジなのかは色々な検査をしていただけなければわかりません。

 

歯周病治療にあたり、僕は常日頃から「患者様のステージを把握してから進め

ていくことが重要」だと考えています。

なぜなら、いきなり治療を始めるのではなく、きちんとした検査を行い、原因

をつきめてこそ、歯周病を的確に撃退できるからです。

 

当院では患者様が3つのステージのうち、ご自身のステージを把握するための検査は

5種行ってます。レントゲン検査、口腔内写真検査、歯周ポケット検査、歯周細菌検査、

血液検査です。必要に応じて検査させていただきます。

 

次回からそれぞれの検査の特徴についてお話していきます。

歯の豆知識シリーズ3

 歯の色あれこれ②

 

 透明度の高いエナメル質の中に、象牙質の色が透けて見えるのが健康な黄色歯であることは前回にお話しました。実はそれ以外にも歯が黄色や褐色となる場合があるのです。

 それは嗜好品(お茶やタバコなど)によって表面に色が沈着してしまっている状態の歯や、神経を取り除いてから時間が経っている状態の歯、そして幼児期にテトラサイクリン系のお薬を服用されたことがある場合の歯などです。

 これらの黄色や褐色の歯は決して健康な歯の状態とは言えません。 表面の色素沈着によるものは、歯磨きや歯科医院の専門的クリーニングによって簡単に取り除けますが、神経のない歯の変色は歯の中からホワイトニングをしたり、セラミックなどの被せ物による治療を受けないと改善することができません。

 

 さて、黄色の歯以外の白い歯、黒い歯についてももう少し詳しくお話しましょう。白い歯は前にも説明しましたが、エナメル質の結晶化が弱いと透明度が低くなり白っぽく見えます。これは軟らかめのエナメル質となりますので、虫歯などになり易く、注意が必要です。一方、このような不健康な白さ以外にホワイトニングなどによっても白い歯となります。

 ホワイトニングは専用のホワイトニングジェルの効果により、歯の着色有機質を分解し無色化することで白さを得ます。なので歯を溶かしたり、不健康にすることはありません。

 

ホワイトニング術前


ホワイトニング術後

黒い歯にはどのようなものがあると思いますか?そう、虫歯です。しかし、虫歯以外にも歯が黒くなる原因があるのです。実は健康保険範囲内での歯の詰め物や被せ物によっても歯が黒く染まってしまうのです。お口の中の過酷な環境に耐え切れず、金属が溶けだして歯を黒く染めるのです。放って置くと歯茎まで黒くなることもあります。

 

 このように、よく見かける黄色い歯や白い歯そして黒い歯はそれぞれ原因があり、場合によっては治療しなければなりません。歯の色おかしいな?と思ったら、一度ご相談ください。

 

 

歯の豆知識シリーズ2

歯の色あれこれ①

 

よく見られる歯の色には白、黄、黒の3色があります。

この3色で一番健康な歯の色はどれだと思いますか?

白!と答える方が多いかも知れませんが、実は黄色が一番健康な歯の色なのです。

 

歯にはエナメル質、象牙質、セメント質の3層あると前回もお話しましたが、健康な歯は一番表層の透明なエナメル質の下に黄色の象牙質の層があるのです。

歯はほとんどがミネラル(無機質)でできているのですが、このミネラルの結晶化が進めば進むほど透明となり歯は硬く、低度であればあるほど乳白色となり軟らかくなります。ですから、健康な歯=硬く、透明な歯で、その下の層の象牙質の黄色が強く現れている歯なのです。

 

では、他に歯が黄色となる原因はないのでしょうか?

そして白い歯は良くないのでしょうか?黒い歯は?

次回はその辺りを探っていきましょう。

歯の豆知識シリーズ1

食事は歯の大敵

 

毎日の食事に欠かせない歯。

その歯はエナメル質、象牙質、セメント質と3つの層からできており、一番外側のエナメル質は人体の中で最も硬いのです。

 

 

ちなみに、骨の硬さが象牙質とほぼ同等と言われています。

さて、その最も硬いエナメル質ですが、食事をする度に溶かされる危険にさらされていたのをご存じでしたか?

普段はツバ(唾液)の作用によってお口の中は中性に保たれているのですが、食事などを摂るとお口の環境が変化し酸性に傾いてしまいます。実はこの酸性環境がエナメル質は苦手なのです。

食後には速やかに唾液の作用によりエナメル質の修復が始まるのですが、修復し終える前に再び食事を始めるとエナメル質にダメージが蓄積し完全に溶けてしまう恐れがあります。

 

朝、昼、晩ご飯以外の間食を減らし、一日の食事回数や時間を少なくすることで歯を守ることができます。また、食後に早めの水や重曹水でのうがいも唾液による歯の修復の助けになりますので、お勧めです。

食事で疲れたエナメル質を唾液がきちんとケアーしてくれる時間をつくってあげることが大切なようですね。

治療ケース報告2 インプラント(サイナスリフト)

インプラント治療の症例を一つご紹介したいと思います。

 

インプラント手術は通常、骨にチタンでできたネジみたいなものを植え付けるだけの単純な手術である上に、すべての工程がシステム化されているため、とても安全な手術と言えます。

しかしながら、時によりこの単純な手術が複雑化することがあります。

その要素として最も多いのが、インプラントを入れるための骨の量が不足しているということです。

 

今回ご紹介する症例は、上あごの奥歯で骨が無いケースです。

 

40代、女性。左上の歯茎の腫れを訴えて来院されました。彼女が初めて来院されたのは

2011年の6月ごろでした。

診査・診断により、ブリッジ治療の土台となっている歯が大きく割れていることがわかり、残すことができない状態でした。

もともと2本の歯を失ってブリッジにされていましたので、今回の抜歯により連続した3本の歯を喪失したこととなります。

見た目や気持ち悪さなどにより入れ歯治療は考えておらず、彼女はインプラント治療を選択されました。

 

歯を抜いて半年後の口腔内写真とCT画像

<2011年12月サイナスリフト術前>

 

口腔内写真より、 抜歯した左上には3本の歯の喪失が見られ、傷跡はキレイに治っていることが分かります。

次にCT画像の〇印部分に注目してみますと、歯を失った部分周辺が大きく黒く抜けて写っているのが確認できます。これは上顎洞と言われる空洞で副鼻腔の一つです。鼻から吸い込んだ空気が溜まるところで、左右一個ずつあります。

このケースでは本来、失った歯の周辺にあるべき骨がなく、ほとんどがこの上顎洞となっているのです。もちろんこのままではインプラントが入るための骨の量が足りませんので骨を増やさなければなりません。

そこで今回はサイナスリフトといわれる上顎洞に骨を増やす術式を用いて手術を行い、骨量を増加させました。

 

<サイナスリフト術後CT画像>

〇印のブツブツしている白い像がサイナスリフトによって増やした骨です。

もちろん今の段階ではすべて人工的な骨です。

その後6か月経過を待つことで少しずつ自分の骨となっていくのです。

そして少し自分の骨として固まってきたところでいよいよインプラント手術です。

 

<2012年6月インプラントOpe後CT画像>

サイナスリフトより半年経過しましたのでインプラントOPEを行いました。

OPE後の〇印部分のCTをみますと、作った骨が少し吸収されて減った代わりにブツブツ感が薄れ、自分の骨と一体化してきている様子が伺えます。

 

今回のケースはほとんどが作った骨なので、長持ちさせるためにできるかぎり長くて太いインプラントを3本入れました。

 

<2012年12月最終的なかぶせ物後の口腔内写真>

インプラントOPEから更に6カ月経過し、無事、最終のかぶせ物まで辿り着けました。

 

そして定期健診時CT画像

<2013年4月>

インプラントOPE後のCT画像と比べても増加させた骨の量に変化はなく、更にブツブツ感が薄れ、更自分の骨との一体化が進んでいることがわかります。

また、鼻腔などへの感染も見られず、インプラントの経過も良好である。

 

 

骨の量があり、単純なステップで行うことができるインプラント手術は術後2~3カ月で咬めるようになり、機能しますが、このような骨の量が不足し、いろいろな方法で骨量を増加させていく場合、手術のステップが複雑となり、咬むことができるようになるまで1~2年の月日が必要となって来るのです。

しかし、彼女はたった1~2年の努力でその後快適な食生活をおくれるなら、入れ歯やブリッジのわずらわしさを考えると全然楽だと言います。

現在、極力治療期間を短縮してインプラント手術を行う方法もありますが、当院では複雑なステップが必要であればあるほど、時間をかけてしっかりとした待ち期間を設けながら治療を進めております。そのようにすることで、インプラント手術におけるリスクを減らし、複雑なステップをより安全で確実にクリアしていけるのです。